TVのキャスター 番組の最後

笑顔で 「新しい日常を」だって 

僕は思い出す 2011年のことを

3月11日からまもなく

「がんばろう東北 がんばろう日本!」って言った偽善者は誰だ?

きっと今回の「新しい日常」なんて言葉を発明した人も同じ感性なんだろう

残念だけど 今そんな気になれないよ  

急にパンクした自転車に とまどったペダルは

回転をことさら速く虚空をあがく

前向きじゃなくたっていいと思う

———

実際、久々に再会した生徒のなかにはさまざまな事由で元気のない子もおり、学校がまもなく再開しようとする時期、新たな気分でスタートを切れないお子さんが多いことを感じます。私自身もそうです。5月がもうすぐ終わりますがこの数ヶ月は相当重く長く感じられました。おそらく皆さんと同じでしょうが、毎日闘っている感じです。いっぽうでコロナとの闘いが終わったわけではないので、パンクした自転車から降りて引きずりながら歩くような心境でいます。

ある生徒の作文の宿題で、「この期間中、マイナス体験をプラスに変えたこと」というテーマで何か書けというものが出たのですが、これには正直いささか怒りを覚えました。上の拙い詩は私の怒りから出たものです。ベクトルが完全に逆です。特に今、教師に求められていることは、生徒をしっかり受け止め、もしも言葉にならない声があればそれを静かに深く聴き取ることなのではないのでしょうか。軽々しい慰めや元気の押し売りなど誰が求めているでしょうか。この時期、子どもたちのありのままを受け止める防波堤の役割が教師やあらゆる教育・福祉・心理専門職従事者に切に求められていることと思います。

マイナスをプラスになどと、まだ会っていもしない生徒たちに向けてありていの美辞麗句を言っている場合ではないのです。これでは前向きになれず不安な気持ちで登校する生徒は取り残された気分になるのではないかと思います。別に私は人格者でも何でもありませんがそのように思います。