中3受験生の昨日の授業は社会の地理でした。
都立高校の受験によくでるところを中心に学習しましたが、日本の地域の特徴についてふれている最中に、
生徒のO君とT君いわく、「先生、荒川区にはこれといった特徴がないね。」「うん、なんもない。」

2人の感想は、日本のさまざまな地域について学ぶなかで、自分のまちをあらためてとらえようとする、ごく自然な思考の成り行きなのだと思いました。自分が地域のなかで育ち、一定の影響を受けてきている以上、その地域がどのような特徴をもっているのかを考えることは自分とはなにかにつながる大きな問いです。
その意味で僕は少しうれしくなりました。

たしかに、…荒川区はひとことでいえばローカルであるのに加え、地味です。同じ東京の下町といっても、上野・浅草・谷中のような、よその地域や国の人たちの興味を惹きつける派手なところはほぼありません。
「もんじゃ」は月島に水をあけられた感じもあり、「都電荒川線」が「東京さくらトラム」に名前を変更したからといっても…。

せめて、京成線のガード下の昔ながらの店舗や、町屋駅周辺の、平成初期まで存在していたごちゃごちゃした景観が残されていればなあと、じめじめ思うことはあります。しかし、これもあとの祭り。時代の流れで仕方がないところもあるでしょう。

一方で住みやすさの面ではどうでしょうか。私見ですが、それなりに住みやすい町ではあると思います。どの世代にとっても、病院や保育施設、学校、福祉施設などのインフラは、ほかの区との人口比、面積比からいっても劣るものではないでしょう。治安の面でもけっして悪くない。ですから、この周辺地域はひとくくりで言って、それなりに便利・安全・安心・快適なのだと思います。

では、住民の幸福度ではどうでしょうか。荒川区が興味深いことに5年前から区民の幸福度調査をやっています。
http://www.city.arakawa.tokyo.jp/kusei/chosa/GAH_Q.files/29GAH.pdf
(アンケート調査で、回答者の性別・年齢層・属性に偏りがありますが、おもしろいので興味のある方は一度ごらんになってください。)

とくに目をひくのは、回答者のなかで幸せを実感しているひとは実感していない人に比べて非常に多いけれど(幸せを感じる48.7% / 感じない9.8%)、その幸せが地域性とあまり関係していないようにみえるところです。

そもそもふだんの日常生活が区内だけで閉じていず、職場や自分の属するコミュニティが他地域にある人が多いと思うので仕方ない面もありますが、区民のなかで地域に対する愛着や魅力を実感している人は少なく、住民どうしのつながりも意外なほど希薄な姿が浮かび上がっています。
これでは子どもたちが自分の住む地域を「なんもない」と言っても不思議ではないでしょう。

データからはいっぽうで、たとえば子育て世代での子どもの成長にかかわる関心度の高さや、間接的ではあるけれども地域の人間関係のつながりを求める住民の意識もみてとれるようです。

少なくとも、自分の生活する地域である以上、子どもたちにとっても魅力的なまちであることを望みます。
そのために手弁当で何かできることはないでしょうか。そう感じています。