仕事柄、自分の幼年期から思春期、青年期にかけてを思い出すことがある。それは自然と私よりもずいぶんと年若な生徒と日々接しているときに、断続的に浮かび上がる。

6,7歳の小学2年生のころであったか、私は家の外で大正生まれの祖父と一緒にすっかり暮れかかった夜空を眺めていた。祖父は、私が大嫌いであった、駒込にある、当時から有名な、とある厳しい指導で評判のスイミングセンターの送り迎えを労をいとわずしてくれた人でもあった。その祖父が、ひとつの星を指さして、「人間、ワルいことをすると、あんな星みたいになっちゃうんだ」と言った。私は「ええーっ、ほんと?」と驚いた。祖父いわく、「いいことをすると、ちゃんと人間に戻れるんだ!」

そのことを思い出すことがあって、先日、自分の実践の「トリック」として使う機会があった。
授業中少々やんちゃな小学生の男の子にむかって、私は席のうしろに並んでいる4台ほどのえんぴつけずりを指さして、「ほら、ワルイことすると、このえんぴつけずりになっちゃうぞー。このえんぴつけずりはねー、もとは人間で、ワルイことしたから、これになっちゃったんだ。もとの名前はねー、山田くん、佐藤くん、○○くん △△くんだったんだよ。せんせー早く人間にもどしてっていってるよ!」

効果はてきめん(?)であった。一瞬、その子の顔が恐怖でひきつったのを私は見た。小学生の上級生は私の顔を見ながら、あははと笑っている。ほんとのことはしばらく言わんとこ。
この年齢あたりの子どもにとってファンタジーはいいものだ。たとえば、サンタクロースの存在を信じているのと同様に。

画像:©freedesignfile.com